創業前の要点整理

企業の生存率は?

 唐突ですが、「企業の生存率」がどれくらいなのかご存じですか?
 10年以上前のものになりますが、2010年12月に中小企業庁が帝国データバンクに委託して実施した「起業に関する実態調査」(下図を参照)によると、企業の生存率は、創業から5年後で約80%、10年後で約70%、20年後で約50%です。

    ※出典:中小企業庁『中小企業白書2011』187ページ

 一方で、『日経ビジネス』の記事には、「ベンチャー企業の生存率は、創業から5年後は15.0%、10年後は6.3%。20年後はなんと0.3%です」という記載がありました。

 なお、日経ビジネスの記事については、その出典元を確認することができませんでしたが、この数字を素直に信じるなら、ベンチャー企業を起ち上げ、新規事業を成功に導くことは非常に難しいといえます。

 また、国税庁が2021年3月に公表した「国税庁統計法人税表」(2019年度)によると、全国の普通法人276万7,336社のうち、赤字法人(欠損法人)は181万2,332社で、赤字法人率は65.4%でした。つまり、既存の法人企業のうち、約3分の2が利益を上げていないということです。

 以上のデータを見ても、創業した会社を長期に渡り存続させること、さらに利益を上げ続けることは、とても大変であるとおわかりいたけると思います。

 前置きが長くなりましたが、創業してわずか数年で廃業することにならないように、あなたがこれから始めようとしているビジネスの要点を「6W3H」の思考ツールで整理しておくことをお勧めします!

6W3Hによる要点整理

①Who:誰が(自分)
 創業者自身の能力(知識・技能・適性・経験・ネットワーク等)の棚卸を行います。
 自分の強みが最も発揮できるビジネス(業界)で起業することが成功率を高めます。

②What:何を(商品)
 どんな商品を取り扱うか、重点を置く商品や取り扱う商品の範囲(幅)について考えます。
 また、商品の「コンセプト」は何か?見込客に提供する価値は何か?についても考えます。
 ※商品:販売を目的とする品物・サービス・技術・情報・権利などの「売りモノ」のこと

③Whom:誰に(見込客)
 誰に対して販売するか、ターゲット(対象)となる客層・業界を絞り込んで考えます。
 ※見込客:自社や自店の商品に関心があり、購入する可能性がある個人や法人のこと

④Where:どこで(場所)
 訪問型の営業を行う場合は、訪問する重点地域と最大範囲について考えます。
 店舗型の営業を行う場合は、出店する場所の立地・商圏について調査します。

⑤When:いつまでに(期限)
 いつまでに目標の売上や客数などを達成するか目標達成期限について考えます。
 また、もしも事業が軌道に乗らなかった場合の撤退時期についても考えます。

⑥Why:何のために(目的・理由)
 事業を行う理由(目的)や事業を通して実現したいことは何かについて考えます。
 見込客が自社(店)商品を利用する理由(シチュエーション)について考えます。

⑦How To:どうやって(集客・販売方法)
 見込客にどうやって告知し、集客するか、広告宣伝の媒体などについて考えます。
 次に、集めた見込客にどうやって商品を販売するか、その方法について考えます。
 そして、見込客から得意客に育てる仕組みをどうやって作るかについて考えます。

⑧How Much:いくらで(予算・販売価格など)
 事業に必要な資金はいくらで、自己資金で賄えない時はどう補うかについて考えます。
 見込客に提供する商品の販売価格をいくらに設定するかを考えて決めます(値決め)。
 売上の目標をいくらに設定するか、そのために必要な経費はどのくらいかを考えます。

⑨How Many:どのくらい(数量・人員など)
 目標とする売上を達成するために必要な販売数量、または客数などについて考えます。
 事業を行うために必要な人員は何人か、そして、各人の役割や配置について考えます。